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著作分類 IIRワーキングペーパー
著者 加賀谷哲之
論文タイトル 日本企業の無形資産投資と企業評価
機関名 一橋大学イノベーション研究センター
ナンバー WP#07-07
公開日 2007/04
要旨  本研究の狙いは、日本企業の中で業界平均を上回る超過事業資産利益率を長期間にわたり計上し続けることができている企業(以下、「無形資産優良企業」と呼ぶ)がどのような財務的特徴を兼ね備えているのかを検証することにある。このため、1986〜2005年度にかけて連結財務諸表が連続して入手することができる日本企業839社をサンプルに、無形資産優良企業とそうでない企業(比較企業)では、財務的特徴がどのように異なるのかを検証した。<br> 第1に業界平均を上回る超過事業資産利益率を長期間にわたり計上し続けることが可能かどうかを検証するため、事業資産利益率の平均回帰性を検証した。検証の結果、日本企業の多くは、時間の経過とともに業界平均を超過する事業資産利益率は消滅していることが明らかになった。一方でサンプルの1割強にあたる87社の企業が過去16年間以上、一貫して業界平均を上回る利益率を維持していることが確認できた。<br> こうした無形資産優良企業は、①業界内売上シェアは変わらないにもかかわらず、売上原価比率が低い、②売上成長が高い、③研究開発投資や広告宣伝投資など無形資産投資の比率・安定性が高い、④従業員一人あたりの営業利益が高い水準を維持している(一方、売上高は低い水準にとどまっている)、⑤従業員一人あたりの有形固定資産や減価償却費は低く、研究開発費や広告宣伝費は高い、⑥棚卸資産回転期間など運転資本の回転が効率的である、などの結果が導き出された。<br> こうした結果から、無形資産優良企業は、そうでない企業と比べて、①利益志向、長期志向が強く、設備投資に依存せず、ヒトの知恵や組織に蓄積されている事業ノウハウを軸に利益を創造している、②在庫や売上債権などの運転資本を持続的に圧縮するための活動(たとえばカイゼン活動)などにも熱心である、③研究開発投資や広告宣伝など将来の利益源泉となる技術・知識やブランドへの投資にも熱心である、などの特徴を兼ね備えている可能性が高いことが確認された。またこうした無形資産への投資が利益や成長として実績に結び付けられると、組織内に無形資産の重要性の認識が共感され、結果として、良質な無形資産を持続的に蓄積する企業文化が醸成されることになる。<br> また株式市場もこうした企業をより高く評価していることが確認された。<br>
備考
参考URL
ラベル 経営学
登録日 2007/12/31

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